Prove It All Night (Bruce Springsteen)
1978年のアルバム「Darkness on the edge of town」に収録されている曲。「スプリングスティーンの曲の中で最も好きなものを1曲だけ挙げろ」と言われたら、私はこの曲を挙げるだろう。アルバムとしてもこのアルバムが一番好きだし、回数も一番聴いているような気がする。アルバムはタイトルが示す通り、希望に満ち満ちたロックンロールは少ない。多くの曲は苦悩の中で光を探す主人公を描いている。
このアルバムの前のアルバムは、あの大ヒットアルバム「Born to run」。次のこのアルバムが出るまでに約3年掛かっている。さすがのスプリングスティーンも相当のプレッシャーがあったのか?と思いきや、裁判沙汰に巻き込まれていたのだった。アメリカではよくある話で、マネージャーとの金銭トラブルが勃発していたとのこと。騙されたのはスプリングスティーンだったのだが、戦いの末あえて敗訴という形で自由を取り戻し活動を再開。契約に関わる裁判だったため、契約の主軸とも言うべき新譜のレコードは最もタブーなものであったのだ。
このアルバムの参加ミュージシャンは前作とほぼ一緒。ギターは全編スプリングスティーン本人がプレイしている。日本ではソロ・アーティストがレコーディング・ミュージシャンであることはなかなか成立しないのだが、そんな当たり前のことを70年代にやれてしまっているアメリカという国のポップ・ミュージックの懐はやはり深い。尤も日本でも最近はそういう人が増えてきていると思うが、70年代当時を比べて考えるとその差はあまりにも大きい。それはきっと、ポップ・ミュージックそのものの歴史の違いなのだろう。
スプリングスティーンのギタープレイは、ギタリストを目指す少年たちが好むようなテクニック満載のものではないかもしれない。所謂「ギタリスト」然とした感じではないだろう。しかしそれには「声」があるような気がする。歌と同じく様々な感情があるのだ。それを表現出来るのはやはりソングライターであるからで、それがスプリングスティーンの歌の魅力のひとつになっているのは言うまでも無い。サウンド云々の前にあるのは「歌」。そのメッセージの肉付けのひとつにギターがあるということなのだ。
今もなおこの曲では変わらずにリードギターを披露するスプリングスティーン。その迫力はテクニックを超え、我々の心に突き刺さる。この曲を心の支えにしている人は今も少なくないだろう。


最近のコメント