E.M.I (Sex Pistols)
1977年のアルバム「Never Mind The Bollocks」に収録されている曲。このアルバムはセックス・ピストルズ唯一のオリジナル・アルバムである。パンクの大御所のように思われがちだが、このバンドの活動期間は2年半(再結成後は除く)、レコード・デビューからは1年2ヶ月で解散してしまったバンドなのだ。それでも多くの人々に影響を与え、後々まで語り継がれるバンドであったことは確か。それほどの影響力を持ったバンドはそう多くはないだろう。
ピストルズがパンクの元祖(本当の元祖はN.Yのムーヴメントであるけれど)であることは間違いないだろうが、自由奔放に振舞っていたメンバー達は実はマネージャーであったマルコム・マクラーレンに操られていたという話も聞く。自分達の何らかの想いとビジネスの臨界点が限界に達した時、この曲のようなものが作られるのだろう。しかしそれも、実は操られていた結果なのかもしれない(良く言えばプロデュース)。この曲で歌われるEMIとはレコード会社のあのEMI。ピストルズが最初に契約し、「Anarchy in The U.K.」という曲でシングル・デビューしたレコード会社である。これで順風満帆かと思われたが、テレビ出演の際の暴言や社会的不適切な歌詞などが問題になり、この1曲だけでEMIとの契約は解除。その後A&Mと契約したが、1週間で契約打ち切りという事態にもなった。この「E.M.I」はその時の心情を歌にしていると思われるが、この曲をリリースしたヴァージン・レコードは立派。しかし日本での販売者が東芝EMIというのが笑える。
この曲を始め、このアルバム全体に言える事は、コンプレッサーの掛かり具合が非常に大きいということ。何テイクもの音を重ねたという話も聞くが、そういう風に聴こえないのは作戦だったのだろうか。それともレコーディング自体ハチャメチャな感じで、音のバランスも何もあったものでは無かったから幾つも音を重ねた、ということなのだろうか。しかしそうであったとしても、そもそもパンクとはそういうものであったはずだし、そうであったからこそ既成のものでは無いものが生まれたのである。そう考えると、ビジネスとして管理しなければならないレーベルやマネージメント側にとって、彼等の目指すところなど理解のしようも無かったとも言える。事実、当時のピストルズのツアーに拘った関係者は、「二度と拘りたくない」という口ぶりだったという。しかしそれと同時に、「催し物としては最高だった」とも語ったという。狂気のギリギリのところに存在する善悪を超えたパフォーマンス。パンクというものはそういうものだったのかもしれない。
ピストルズの不幸は、自分達の想い(例えそれが暴力的な事だったとしても)をビジネスに変えようとしてしまったこと。単なる不平不満をぶちまけるだけであれば、クラブで演奏しているだけでも良かったはず。ビジネスになったことによって多くの人がピストルズを知ることが出来たのは確かだが、その想いとこの曲のテーマのようなものが相反してしまうのが辛いところだ。そういう意味ではこの曲はプロ・ロック・ミュージシャンの永遠のテーマなのかもしれない。
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