2009年3月 2日 (月)

アルバム全曲解説 「ジェントルソング」

「Rock Gentleman」最後10曲目の曲は「ジェントルソング」。

今回このアルバムを作るにあたり、最初にイメージしたのは最後のこの曲だった。最後の曲だけはこういう感じでいこう、と最初からイメージしていたのである。それは若い頃の理想とかけ離れた人生を受け入れる男の歌、ということである。

俺の好きなアルバムに、浜田省吾さんの「誰がために鐘は鳴る」というアルバムがある。このアルバムは一般的に言えば非常に重い。その重さとは単に暗いということではなく、自分の人生を客観的に受け入れる諦観したような男の歌が並んでいるということであった。40回目の誕生日に頭を打ち抜いてしまう男がそこに見たもの、トレード宣告される野球選手、空っぽのサイドシートに話しかける男、そして引退していくミュージシャン。そんな男達の歌。そのアルバムは1990年の作品、浜田さんが38歳の時のアルバムである。そして今回、俺のこの「Rock Gentleman」も38歳の作品。それを意識してイメージしたわけではないのだが、結果的にこの2枚のアルバムは同じようなテーマで作られたような気がするのだった。

もちろん俺と浜田さんとでは天と地ほどのスケールの違いがあるわけだし、20年前と現在の38歳とでは社会背景も社会の年齢に対する認識も全く違うわけだが、それでも38年という物理的に過ごしてきた時間というのは一致しているわけで、一個人としてそこで考え始めることは同じということなのかもしれない。それに気が付いたのはアルバム完成間近の頃だった。そのテーマの選定は決して間違いではなかったと思っている。

この曲のサウンド・イメージも最初から明確にあった。それはジャクソン・ブラウンの「The Pretender」。変な言い方だがもうこの曲が死ぬほど大好きで、いつかこんな曲を作りたいと常々思っていたのだった。それはサウンドのみならず、歌詞もこれ以上無いくらい素晴らしいものであり、自分の生き方について悩んでいる人にこそ聴いて欲しいと思う曲なのである。その歌に疑問に対する答えは無く、歌の主人公も同じように悩み苦しんでいるだけ。人生を投げ出してしまう一歩手前のような心境なのだが、それが逆説的に勇気付けられると言うか・・・。そんなテーマで作りたいと思っていたのと、先に述べた38歳なりの想いが重なってこの曲が出来たのだった。

アレンジ的には「The Pretender」に、同じジャクソン・ブラウンの「Late For The Sky」の印象的なギターが加わる、みたいなイメージ。この2曲に救われたことは本当に何度となくあったから。シンセのソロはオフコースの「思いのままに」のプロフェット5のイメージだったのだが、やはりあの独特の音を作り出すことは難しかった。結果的には浜田省吾さんの「青春のヴィジョン」のソロみたいな音になってしまったのだが、まぁそれはそれで良かったのかも。でも今後のためにも、プロフェットのソフトシンセは購入したいと思っている。

この曲のタイトルが何故「ジェントルソング」なのか。それは自分の人生をきちんと受け入れられることがジェントルマンなのではないかと思ったからだ。この曲のテーマは「笑いとばせ」と同じで青春との訣別の歌。どういう形であれ、現実という真実を受け入れる日が必ず来るということ。その時嘆き悲しんだとしても、そういう人は必ず報われるだろうと思っているから。「笑いとばせ」の解説で述べたように、夢を諦めることと諦めないことは同義語だと思う。諦めた時に初めて見えてくるものもあるだろうし、諦めないことで失ってしまうものもある。追いかける夢に忠実なあまり、かつて自由の象徴だった自分の夢に縛られてしまうことだってある。その線引きは自分自身で決めるしかない。しかしそれは明確に「ここまで」というものがあるわけではない。スパッと切り替える美しさもあれば、誰が何と言おうとやり続ける正義だってある。要は自分自身の気持ちでしかないということ。この歌の主人公は迷いながらもそんな自分に見切りをつけたということなのだろう。

こんな気持ちは前述の「誰がために鐘は鳴る」のラストの曲「夏の終わり」と同じ。そんなところから見ても、このアルバムはやはり浜田さんのものと同じく「諦観」のアルバムなのかもしれない。しかしそんな想いになりながらも、「冗談じゃない!こんな人生に翻弄されてたまるか!」という気持ちになることだってあるだろう。そんな時はまた1曲目の「おやじロック」に戻るという仕組みに作ったのだ。結局、この気持ちの繰り返しが人生というものなのではないかと思ったのである。

以上10曲。これが作者としての解説です。
でもこれに縛られず、聴く人は自由に聴いてくれて良いのです。それが音楽だと思うから。
今年いっぱいはこのアルバムを多くの人に聴いてもらえるように頑張りたいと思います。ぜひ応援して下さい。宜しくお願いします。

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2009年2月23日 (月)

アルバム全曲解説 「笑いとばせ」

「Rock Gentleman」9曲目は「笑いとばせ」。

この曲は2年ほど前からライブで歌っていた曲だった。その時はライブで歌うための曲ということで、とにかく8ビートのストロークの曲が必要だったのだ。当時は毎月ライブをやっていたので出来るだけ新曲を披露したかったし、俺の曲には案外8ビートの曲が少なくて・・・。というか、ギター1本アコースティックでライブをやる場合、8ビートの曲というのはやり難かったりするのだ。何かリズムがしっくりこないというか。相当テンポが速くないとダレる感じがあって、テンポの速い曲が欲しいということで作ったのがこの曲だったというわけ。作った時期には似たような雰囲気の曲を何曲か作り、それらもライブで歌ったりしていたが、一番完成されていたのがこの曲かも、ということで今回収録することにしたのだった。

そんな経緯があったので、曲を作った時には具体的なサウンド・イメージは無かった。とにかくアコースティック・ギター1本で歌えるテンポの速い曲、ということがテーマだったから。それでも色々考えた時、浮かんできたのがボブ・シーガーの「The Fire Inside」。あの曲のような、8ビートでありながらギター中心ではなくピアノを軸にしたアレンジが良いな、と思って。8ビートでギター中心となるとやはりすぐに構図が浮かんでしまうから。ピアノのフレーズが暴れているようなイメージでアレンジを進め、今回のサウンドになったのである。

この曲の歌詞はこれまで俺が書いてきたものの中では一番良いものが出来たと思う。美しいとかそういうことではなくて、短いフレーズの中で言いたいことをキッチリ表現出来、それぞれがキャッチフレーズのようにインパクトのあるものになっているというか・・・。もしこのアルバムのキャッチフレーズを考えるならば、この曲の歌詞を引用するだろう。それほどこの歌詞には満足している。

内容としては、簡単に言えば「夢を諦めろ」ということ。それは実は非常に勇気の要ることなのではないかと思う。それと同時に「夢を諦めるな」ということと同義語でもあると思うのだ。一番怖いことは自分の夢に引き摺られて「難民」になってしまうこと。「たかだかこんな人生なんて」と笑いとばすことが出来れば、その人の人生は幸せなものになるだろう。笑いとばして次に進めば良いのだから。それはきっと、自分自身に対して伝えたかったことなのかもしれない。

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2009年2月12日 (木)

アルバム全曲解説 「せめて今夜だけ」

「Rock Gentleman」8曲目は「せめて今夜だけ」。

この曲は渡邉大輔という人の音楽に触れたことがある人なら恐らく誰もが知っているであろう定番曲。渡邉大輔の代表曲と言っても過言ではない曲だ。と、自分で言うのも何か変な気がするけれど。この曲はこれまでにも何度も録音してきているのだが、その度に「何か違う、違う」とずっと思い続けてきた曲でもあった。

実は2006年の夏、とある人から「あの歌詞、直した方が良いんじゃないか?」と言われた。それはサビのほんのちょっとした部分であったのだが、そう言われれば確かにおかしい気がした。長い間そのままで歌ってきたので気付かずにいたのだが、改めて考えるとやはりおかしかったのだ。そういうわけでそれ以来ライブでは直して歌ってきたのだが、折角の機会だし直した音源も無いので今回新たに録り直したというわけである。

この曲は時間という軸が歌の背景を作ってきた、という実感がある。今も覚えているがこの曲は1996年の夏に作った曲で、もう10年以上歌い続けてきているというわけだ。歌い続けることによって様々な情感が肉付けされる形になり、歌の世界が拡がったように思う。歌の基本的なメッセージは変わらないとしても、そこに行き着く気持ちが違うと言うか・・。それは俗に言う「説得力」というものなのだろう。今でも俺の曲を初めて聴いてくれる人の多くは、この曲が一番好きだと言うから。

今回この曲をこの形で収録出来たので、余程のことが無い限りもう録音することは無いだろう。そのくらい今回の出来には満足している。そりゃ挙げれば拙いところは幾らでもあるが、そういうことを踏まえても「せめて今夜だけ」という曲の世界は十分に出し切れたと思う。この曲は俺の代表曲かもしれないが、そこに拘り立ち止まる気は毛頭ない。この曲以上に良い曲を作り、更に代表曲と言われるものを作らなければ創作する意味など無いから。しかしそれは結構なプレッシャーでもあるのは事実。音楽とは改めて小難しい理論ではないのだと痛感する。この曲の作りはそれほど難しいものではないから。

この曲の叫びは間違いなく俺の叫びでもあった。個人的な叫びが良い方向で昇華すると、人の心に届くエンターテーメントになるということを教えてくれた曲でもある。これからも間違いなく歌い続ける曲であるだろう。

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2009年2月 8日 (日)

アルバム全曲解説 「青い風に吹かれて」

「Rock Gentleman」7曲目は「青い風に吹かれて」。

そもそもこの曲はサウンドから作り始めた曲だった。HipHopっぽいループの中でシンセが組み立てられているようなサウンドを作りたいと思い、色々いじり始めたのがきっかけだったと思う。初めて買ったポケットシーケンサー(YAMAHA QY10)のサウンドライブラリーの中にそんな雰囲気のものがあって、「これ、いいな」という感じでやり始めたのが最初だったのだ。しかし昔から所謂「完コピ」(完全コピー)というものが苦手で、どうしても自分流にアレンジというかいい加減にというか、元々のものとはかけ離れたものが出来てしまうという特技(?)があったのである。しかしこの曲の場合、そんなものが功を奏してオリジナルなものが出来たのだと思う。

元々のサウンドはそんな感じだったのだが、今回これを収録するにあたって色々考えた。以前制作した音源は非常に音数が多く、これをどう整理するか迷っていたのだった。元々がシンセで構築されたサウンドをイメージしていたから音数が多いのは当然で、それはそれで正解だったはず。しかしそれを今やるかどうかはまた別問題。バンドではないので何をやろうが正解なのだが、サウンドに対する自由度が増せば増すほど迷ってくるのが人情というもの。結果的に元のアレンジを踏襲することで落ち着いたのだが、この曲は最後まで色々と悩んだ曲になった。

この曲のループは田中大介君のアイデア。元々は単純な打ち込みを繰り返す感じだったのだが、打ち込みとも生音とも取れない甚だ中途半端なものだったのだ。このリズムアレンジは斬新で素晴らしい。つまり、「引き」の論理。音の厚みで盛り上がりを構成するのではなく、引くことによって音を際立たせるという技術。Aメロよりサビの方がループが少なくなっているのだが、それによってリズムが強調されるという論理は俺には無かったものだ。彼の才能には本当に驚かされる。

この曲は弔いの歌。そしてまた生きることを決意した男の歌でもあり、去りゆく青春を見送る男の歌でもある。歌詞については色々思うところがあるのだが、それは極めて個人的なことであるので語ることは控えたいと思う。基本的に自分そのものを歌詞に投影するのは好きではないのだが、この曲に関しては何の飾りも無い自分が出てしまっていると思う。そうしたことを書かせてしまう事実があったのは確かなことだし今更何かを言えることではないのだが、聴く人それぞれが自分に置き換えて聴いてくれれば良い。でもきっと、この曲は届く人には痛いほど届く曲なのだろうが、届かない人には何を言っているのか判らない曲なのかもしれない。でもそれを知っていても歌うべき曲なのだとも思う。

今回、この曲を納得出来る形で収録出来たことをとても嬉しく思う。どんなに時が流れようとも、この曲の重さは変わらない。そしていつの日か俺が俺の人生に別れを告げる時、誰かがこの曲を思い出してくれたらとても誇りに思う。人はそうして次の世代に学んだことを伝えていくのだろう。

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2009年2月 4日 (水)

アルバム全曲解説 「流浪の工員」

「Rock Gentleman」6曲目は「流浪の工員」。

今回のアルバムを作るにあたり、アコースティックの曲を1曲収録したいと考えていた。この曲はそんなコンセプトから作り始めた曲だったのだが、最後までアコースティックにするかエレクトリックにするか悩んだ曲になってしまった。結果的には当初の考え通りアコースティックになったわけだが、エレクトリックで超ハードロックにしても正解だったと思う。歌詞のコンセプトからみてもどちらでも合う世界だと思うし、ドロドロした世界観はどんなサウンドでも表現出来る自信があったから。でも今回はアコースティックで良かったのかもしれない。アルバム全体の色合いもあるし、この曲順で行くとちょっとしたヘソになるという意味でもこのアレンジが必要だったのではないだろうか。

アコースティックでのサウンドのイメージは、ビートルズの「Baby You Can Drive My Car」をアコースティックギターでアルフィーの坂崎幸之助氏が弾いているイメージ。バンドのノリをアコースティックギター特有のノリで表現するというか・・・。言葉にするのは難しいのだが、バンド全体のフレーズをアコースティックギターで所々表現する、みたいな感じ。もちろんプレイ的に俺は坂崎さんの足元にも及ばないとしても、そもそもはそんなイメージがあったのだった。

歌詞は昨今問題になっている「派遣社員」の待遇について歌っている。その辺を語り出すと音楽とは関係ない部分も出てくるので割愛するが、色々と思うことがあって派遣社員側から見た世界を歌っている。もちろんこれが派遣社員の全てでは無いし、全くの事実を歌っているわけでもないのだろうが、このような現実もあるというところを知ってもらいたかったという気持ちもある。それを歌ったからといって世界が変わるわけではないが、それを表現出来るのも音楽というものの特徴であるはず。社会風刺的なものについて異論を唱える人もいるだろうが、俺は敢えてそういう世界を歌っていきたいと思っている。それは社会を歌で変えたいなどという大仰なことではなく、理屈で説明することなど出来ない一人の人間の欲求なのである。そういった音楽に心を惹かれるというただそれだけのこと。そこから色々なことを考え始めて、音楽家ではない一個人としての人生哲学のようなものを見つけられればと思う。俺が音楽を自分から聴くようになった時、傍にあった音楽はみんなそんな感じだった。逆に言うと、そうした自分なりの何らかの主張を持ったアーティストの音楽が好きだったのである。

自分にそうした主張があり、多くの人を惹きつける力があるとは思わないが、やはり音楽とは自分にとってそういうもの。クラスの人気者がギターを持って歌ったら大喝采を浴びた、というようなサクセスストーリーとは違う種類の音楽なのである。

この曲はそんな俺の全く変わらない部分を示した曲。これまでも、そしてこれからもそういう歌を歌いたいという気持ちの表れなのかもしれない。アルバムの中にあっては非常に地味な存在の曲であるが、心情的には重要な1曲なのだ。

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2009年2月 1日 (日)

アルバム全曲解説 「夏の匂い」

「Rock Gentleman」5曲目は「夏の匂い」。

この曲は数年前、何年か振りにかつて住んでいた町を訪れた時に帰りの車の中で作った曲。懐かしく甘酸っぱい気持ちでいっぱいだったのだろう。殆んどのメロディーと歌詞が同時に出てきたように記憶している。曲を作るという作業は感情の揺さぶりによって出来るものだと思うので、何か強力なことがあれば出来てしまうのは確かなこと。まぁそれが曲としての出来が良いか悪いかはまた別の話だが。考えてみれば、中学高校の頃は毎日のように曲を作っていた。もちろん殆んどがアマチュアレベルの拙いものであるのだが、「物を作る」というエネルギーが常に蓄えられていたのは、「若さ」と「毎日が何らかの形で新鮮だと思える気持ち」があったからなのだろう。今では曲を作るというのは自分の中に何かが溜まらないと出来ない感じだから。十分に溜まり尚且つ天から「曲を作れ!」という指令が降りるのを待っている感じ。なので良い曲だと思える曲は、案外短時間で出来てしまったりするのである。

この曲は最初から女性言葉で詩を考えた。その理由は特に無いのだが、女性言葉の方が柔らかいしイメージする世界に近いと思って。でもよくよく考えると、女の人はこんなこと考えるかな?とも思ったのだが・・・。結局男の俺が作っている曲であるからして、考えていることは男側の気持ちでしかないのだろう。間違っても「女性の気持ちを代弁しています」などということは言うつもりはない。何となく懐かしく優しい気持ちになっているというところで共感してもらえれば嬉しい。

このサウンドは最初からこのイメージ。切なくも前向きでちょっとセンチメンタルな部分もあるポップソング、という感じ。サウンドの傾向は違うがブライアン・アダムスの「Summer of 69」みたいな青春の歌に、シカゴの「We Can Stop The Hurtin'」のカッティングをプラスした感じというか。出来上がってみればもっとポップな感じであったけれど。でもこれ以上無いくらいに理想のサウンドに仕上がったと思う。

この曲は女性アーティストが歌ってくれても良いな、とも思っていた。もともとロックっぽい人ではなくて、それでもリズムのある曲が似合いそうで、尚且つ声の柔らかい人、というイメージ。そう考えると浮かんできたのは夏川りみさん。とても似合う感じがする。ぜひ歌って欲しいな~と考えたが、そんなツテがあるわけないのでボツに。でもきっとカッコ良いと思う。

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2009年1月26日 (月)

アルバム全曲解説 「君の声」

「Rock Gentleman」4曲目は「君の声」。

この曲は某先輩ミュージシャンに「もっと聴く人に希望を与える曲を書いた方が良いんじゃないか?」と言われて書き始めた曲。4年前の「再処理工場」というアルバムを聴いてもらった時に、「メッセージなんかは判るんだけど、聴く人が理屈無く前向きになれる曲も必要なんじゃないか?」みたいなことを言われてしまったのだった。そのアルバムは特に重たいつもりで作ったわけではないのだが、そう言われるからにはそういう要素もあったのだろう。まぁ基本的に俺の音楽は、例えばみんなでワイワイ騒ぎながらスキーに行く道中で聴くような音楽ではないことは知っているが、そういう明るさでは無いとしても、ストレートに元気付けられる曲があても良いんじゃないかな、ということで作り始めたのだったが・・・・。結果的にはそれほど変わりないような気もするようなしないような・・・。とにかく詩を書くのが大変だったような気がする。ラブソングという形を取っているので、ちょっと演じている部分もあるし。でも言いたいことは書けたと思う。

そういう経緯があったので、サウンド的な志向は最初はそれほど固まっていなかった。実はこういう曲が一番難しい。ミディアムテンポの8ビートでそれほど音域も広くないとなれば盛り上がりに欠けるわけで。一度ライブでやったことがあるのだが、思いの外難しくてマイッタ。バンドでやるならともかく、アコースティックではなかなか手強い曲だと悟った。この曲はきっとレコード向きなのだろう。でも後半のコーラスは自分でも満足のいくものになった。もっと入れても良かったかな、と思うくらいである。16っぽいギターのカッティングは田中大介君のアイデア。このカッティングが無かったらもっと存在感の無い曲になってしまっただろう。

色々悩みに悩んだ曲であったが、結果的には重厚感のある大作になったと思う。バンド編成のライブなら静から動に移る重要なパイプの役割を果たすだろう。ちなみにこの曲が今回のレコーディングの初の歌声。今回はレコーディングの途中で声が変わっていったので、この曲だけちょっと違う感じがあるかも。今回のレコーディングはそんな成長過程も楽しめたのであった。

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2009年1月23日 (金)

アルバム全曲解説 「ニュース」

「Rock Gentleman」3曲目は「ニュース」。

この曲は以前に2度ほど録音したことがある。元々はテンポ125くらいの曲で、ライブで歌ううちにバラードになったという経緯があるのだが、今思えばテンポ125なんて信じられない。当時の器量ではともかく、何をどうやったってこの曲はこのテンポが正しいだろう。一人きりでやっていると当然のことが見えなくなる。客観性が失われるということは怖い。

リアレンジ後のサウンドイメージは特に無い。この曲の軸はやはり歌のメッセージであり、それをどう伝えるかを中心にサウンドを組み立てた。ギターベースのアレンジでも良かったのだが、キーを考えるとピアノの方が弾き易いということでピアノ中心にしたのだった。

問題はやはり歌詞。このようなテーマについては歌を作り始めた頃から考えていて、どんなに時代が変わっても相変わらずこういうことは起きている。そしてそこには悲しいのと同じくらいに激しい怒りが当然あるわけで。それを置き去りにしたままでは先に進むことは出来ないのではないかと俺は常々思っている。

「人が人を裁けるのか」とか「人権保護に基づいて裁くべきだ」とか罪の償いにおいて議論は山ほどあるわけだが、多くの人が忘れてしまっているのは「法律とは倫理観の上に則って成立しなければならない」ということ。人を殺してはいけないというのは、法律で定められているからではない。倫理とはそういうことだ。それを言葉で説明しなければ理解出来ない、逆に言えば、理解出来ない人に言葉で説明しなければならないという事実がこの上なく悲しく愚かなことなのである。加害者のバカバカしい人権保護には辟易する。

「人の命は皆平等」という概念は残念ながら正しくない。凶悪殺人者と貴方の命が同じくらいの価値だとすれば、貴方はきっと悲しくなるだろう。価値ある命にすればこそ、人は努力をし優しさを知り、人と関わることによってその価値を高めるのである。氾濫している安っぽい慰めの言葉に惑わされてはいけない。許せる勇気と許さない勇気はきっと同じものだ。怒りを封じ込めることが優しさなのではない。愛する人を無惨な形で失った時、誰もがきっと同じ感情を抱くだろう。そしてその加害者は罪を償うという名目の上、その後もそこで生きていくのだ。時には笑うこともあるであろう時の中で。

そんなやり場のない感情を歌ったのがこの曲。こういったテーマのものがポップ・ミュージックとどう繋がるのかは判らない。人によっては不謹慎だと思うかもしれないし、つまらないと思うかもしれない。でも俺にとっては書かなくてはならない、というよりは、書かせられた曲であるようにも思う。音楽の癒しとは単なる慰めではない。悲しい時に悲しい曲を聴くと慰められるような感じをこの曲は持っているのかもしれない。もちろん、こんな曲嫌いという人もいるだろう。それはそれで仕方ない。しかし、こういうこともあるのだという事実認識は持って頂きたい。そうであるからこそ、そうではない社会にするにはどうしたらいいかを考えるきっかけにしてくれたらと切に願うばかりである。

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2009年1月20日 (火)

アルバム全曲解説 「不倫の歌」

「Rock Gentleman」2曲目は「不倫の歌」。

以前、「このアルバムの<ロック>とは音楽のジャンルではなくて、生き様そのものなのだ」みたいなことを書いたけれど、この曲に関しては最初から「ロック・サウンド」というものを意識して作り始めた。ここで言う「ロック・サウンド」とは、マイナー進行で歌のメロディーとは違うオブリガードのようなキッチリしたリフの上に主旋律が乗っかっている、みたいなイメージ。既存の曲で言えば、ブルース・スプリングスティーンの「Adam Raised A Cain」やイエスの「Lonely Heart」のテンポを速くした感じ、というか。アレンジをしていく過程で結果的にギターでのリフは無くなったが、それはエレピのフレーズで生きている。単にコード感を出すための和音では無く、それ自体がある種のメロディーを持っているプレイが出来たことは嬉しかった。このエレピのアレンジはこれまでのアレンジの中でも最高だと自負している。ワンコードでありながら主旋律を壊さずに動き、尚且つシンプルで無駄が無いという感じ。Bメロはコードバッキングだが、Aメロとサビのフレーズは自分でも気に入っている。尤も、CDでは他の楽器に埋もれて聴き辛いと思うけれど。

詩のテーマに不倫というものを選んだのには理由がある。単にいやらしい詩を書きたかったわけではない。人の生き甲斐というのは何らかの情熱であると思うのだが、それは恋愛であったり仕事であったり趣味だったり家族だったりと様々。しかしそれらが恒常化された時、人は手っ取り早く恋愛に走るのではないかと思って。何かの新聞記事を読んだ時に直感的にそう思った。自分が生きているという実感を確かめるのには恋愛はうってつけで、妻帯者の場合はそれが結果的に不倫になるということ。だから本当は相手のことをどうのというよりも、自分を確認するために誰かが必要だという人も少なからずいるんじゃないかと思ったのだ。

恋愛というものは若さの象徴でもあるわけで、惚れたハレタで一喜一憂出来るうちはまだ幸せだろう。この歌の主人公は、自分の中に若さという可能性が無くなりつつあることに薄々気が付き始めているが、まだそれを認めたくないという逡巡の中に陥っている。だからこそ誰かを巻き込み、生きている実感と自分の中にある可能性を保ちたかったのだ。家族も仕事も持っている人なのに贅沢な悩みだとは思うが、それが俺達の世代、もしくはそれ以上の世代の苦悩になりつつあるのではないかと思う。そんな世代の歌が1曲目の「おやじロック」からの流れとしては絶妙で、この2曲パックがアルバムのテーマを謳うように設定したのだった。

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2009年1月15日 (木)

アルバム全曲解説 「おやじロック」

2009年1月9日リリースのニューアルバム「Rock Gentleman」。
1曲ずつ順を追って解説していこうと思う。
まぁ音楽を解説することほど野暮なことはないかもしれないが、それは「本日の1曲」みたいなノリで良いんじゃないかな。自分の好きな曲を紹介するという感じで。
そんなわけで買って頂いた方は音を思い出して、まだ購入されていない方は音を想像しながら読んでみて下さい。

まず1曲目「おやじロック」。今回のアルバムに関しては、オープニングは3コードのロックンロールでいきたいと考えていた。元々の理想は本当に3コードしか使わないオールディーズなロックンロールだったのだが、それは非常に難易度が高いということで若干変更。シンプルを突き詰めれば辿り着くのがそこなわけで、一見簡単そうに思えるオールドロックンロールはロックの到達点であるように思う。同じようなフレーズ、メロディー、サウンドの中に自分らしさが出るなどというのはホント職人技なのである。

作り始めた頃はイーグルスの「How Long」のようなイメージだったのだが、思いっきり「How Long」のような曲が出来てしまい、幾らなんでもそりゃないだろうということでボツに。それはキーがいけないんじゃないかという事で、AからEに変更して曲作りを再度行なった。

Eにキーを変更したことで、ロックンロールの持ち味であるフレーズが作りやすくなって曲作りが進んだ。Eということでイメージしたのはシェリル・クロウの「Steve McQueen」。あんなフレーズを8ビートにして進めたらカッコ良いな、というのがあった。なので実のところ、イントロのギターリフが出来た時点でこの曲は成功するという確信があったのだ。何てことの無いフレーズなのだが、これを自分のものとして見つけるのは大変なこと。こういうロックンロールスタイルの曲は数限りなく存在し、星の数ほどフレーズが溢れているから。でも自分の中でOKが出ればあとは何に似てようが関係ない。そこはハナから承知の上だから。日本のアーティストでもこの手のフレーズは多い。小山卓治さんの「これでも喰らえ」とか浜田省吾さんの「What's The Matter、Baby?」とか。しかし、判っていても「それで良いのだ!」と開き直れるのがロックンロールの素晴らしさでもあると思う。

詩のテーマはタイトル通り「おやじ」達の賛歌。俺も38歳になったわけだが、おやじというにはまだ早いような気もするけれど、決して若者でもないという自覚もあって。それでも俺らくらいの年代は一生懸命若作りして頑張っている。でもそれはどうなんだろう?と。ずっと思っていたことであるが、大人が子供に憧れる妙な文化が日本にはあるような気がする。少し前に流行った「チョイ悪おやじ」にしても、結局のところ若い奴等の文化の流れの上に乗っかっている感じがして凄く嫌だった。まぁああいうのは消費のための仕掛けだったりするから真剣に考える必要もないのだが、それを真に受けて喜ぶ大人もみっともないな、というのもあって。別にそれだけが嫌だったわけではないが、基本的に若者に迎合せざるを得ない大人の在り様に疑問だったのである。そこに寄り掛からずに生きていこうぜ!というのが基本的なテーマ。まぁ特に詩を深読みする必要もないしそのままストレートで良いのだが、作者の気持ちとしてはそんなところだろうか。

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